「ノーコード・ローコード開発」でDXが加速する!
今後、さらに求められるノーコード・ローコード開発
ノーコード、ローコード開発とは、プログラム開発言語でのコーディングをほとんどすることなくアプリケーションを開発することです。ここ最近、「ノーコード・ローコード」ということばがよく聞かれるようになってきましたが、なぜ今「ノーコード・ローコード」が注目されているのか?
それは、日本の企業やIT業界がかかえている課題とDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる大きな可能性を秘めているからです。
(*)ミック経済研究所
『DX実現に向けたローコードプラットフォームソリューション市場の現状と展望 2020年度版』
(https://mic-r.co.jp/mr/01830/)より
日本企業の大きなIT課題
以前、当ブログ記事でも少し触れましたが、総務省によるレポートでは、現在、多くの企業がDXの推進を阻む課題を抱えており、それを放置すれば 2025年以降、最大12 兆円/年(現在の約 3 倍)の経済損失の可能性があると言われています。
いわゆる「2025年の崖」と言われるものです。
その課題はというと・・
・レガシーシステムの問題:
既存のレガシーシステムのブラックボックス化によりデータ活用し切れないだけでなく、システムの改修が困難で、その保守にも多額の費用がかかるためm新しい技術やシステムに投資することが難しい。
・IT人材不足の問題:
2015年では約17万人だったIT人材不足が、2025年には、43万人まで増加する見込み。
・ユーザとベンダーの関係性の問題:
ベンダー企業への丸投げがシステムのブラックボックス化や保守費用の増加につながる他、ベンダー企業も既存システムの保守にリソースを割かれ、最先端の技術やノウハウが蓄積されない。
ローコード開発ツール/プラットフォームにより、「2025年の崖」問題を完全に解決できるものではありませんが、企業がデジタルシフトを進める上でローコード開発プラットフォームは強力な推進力となり、問題解決への手助けになると考えられています。
誰でもアプリケーション開発できる時代
ノーコード・ローコードの技術を用いて業務アプリケーションを開発するメリットは、専門的な開発知識を持っていない人でもアプリケーションの開発ができるということです。ただし、いくらノーコード・ローコードとはいえ、アプリケーション開発をする上で開発ツールの利用方法や、ビジネスロジックの組み立て方等の知識は最低限必要となってきます。
しかし、従来のコーディングでの開発と比べるとノーコード・ローコードの方が圧倒的にアプリケーション開発のハードルは低いと言えます。
業務フローを知っており、解決すべき課題が分かっている現場の人間がアプリケーションを開発できれば、より現場のニーズにマッチしたアプリケーションとなり、効果が出やすくなるでしょう。さらに、ローコード開発プラットフォームの多くはコンパイル (※)の必要ないため、現場からのフィードバックを即本番環境に反映することが可能です。
(※)人間が分かる言葉で書いたプログラムコードをコンピュータが分かる言葉に翻訳すること
従来の開発の場合、情報システム部門(IS) が要件定義の過程でユーザの要望を伝え、委託先の開発会社のシステムエンジニア(SE) とコミュニケーションを取りながら仕様を確認し、SEは仕様に沿ってプログラマー(PG) にコーディングを依頼するという流れでした。
それでもなお、出来上がったアプリケーションがエンドユーザの期待したものと異なっている、想定していた画面と異なり使いづらいシステムをユーザに我慢して使ってもらっているなどの問題が見受けられました。
エンドユーザ自身が開発を行うということは、IS・SE・PG が不要になりコストと時間を削減できることになります。そのかわり、ユーザ自身がシステム責任を負うことになります。欧米の企業では社内に開発人員を育て、他社との競争力を柔軟なITシステムで実現しています。
この特性は同時に、「IT人材の問題」を解決し得るものになると考えられます。
人材不足がゆえに社内のシステム開発やシステム改修のプロジェクトがなかなか進まない場合が多いのです。かといって、人材の確保は難しく、技術者育成にも時間がかかる従来のITと比べて誰でも開発者となり得るノーコード・ローコード開発では、既存の限られた開発者のリソースに依存することなく、現場主体で様々なアプリケーションを開発し、展開、運用することが可能となります。
企業競争力を高める「スピード」
また、別のメリットとしてアプリケーション開発や展開のスピードがあげられます。
ノーコード・ローコード開発では、ドラッグ & ドロップ等の直感的な画面作成や予め用意された機能を組み合わせるだけのビジネスロジック作成、そして開発したアプリケーションを展開し、運用するための環境も用意されている事が多いため、作ってから使うまで、非常に短期間で行うことが可能です。
従来の主流であるウォータフォール型のシステム開発では要件定義や設計、実装、テストなどすべての工程を進めるために多くの時間が必要であることや、システムに対する細かなカスタマイズであっても時間をかけて計画、テストを行う必要があります。
その他、開発が外部ベンダーへの委託であった場合、カスタマイズの都度、見積りを取る必要があるなど「変えたくても変えられない」「変えるのに時間と費用がかかる」等の状況が現場には多くありました。
さらに、冒頭でも述べたように現在の日本企業ではレガシーなシステムがまだまだ数多くあり、その保守や改修にIT予算の殆どが費やされており、新しいシステムの導入がなかなか進まないという問題が多くの企業に存在します。
特に昨今、あらゆる業種で企業間の競争が激化し、多くの企業でも様々な業務改革を行っています。つまりそれは、常に様々な「変化」が生じているということです。ITシステムがあらゆる業務に欠かせなっくなった今、システムを「柔軟かつスピーディーに変える」ことができなければ業務改革は不十分なものになってしまいます。
それを可能とするノーコード・ローコード開発は、企業の競争力向上にも重要な役割を果たすと考えられます。
ユーザとITベンダーの関係も変化する
システム開発の手法には、先述したウォータフォール型とは異なり、必要な機能から段階的にリリース(スモールスタート)して、さらに機能の変更や追加を短期のサイクルで回しながらシステムを作り上げる「アジャイル型の開発手法」があります。
アジャイル開発は変化に対し、俊敏かつ柔軟に対応しやすいというメリットがありますが、実は、ローコード開発はその性質上アジャイル開発と親和性が高く、組み合わされる事が多いのです。こうした手法では、機能を実装するための技術よりも、業務課題をどのように解決するか、つまり業務プロセスにフォーカスします。
そのためユーザが開発プロジェクトに関与する度合いが従来よりも大きくなり、ITベンダとユーザとの「協働(共創)」によりシステムを開発することになります。
ローコード開発の技術的なハードルの低さに加え、ITベンダとの協働での開発はシステムをブラックボックス化させないため大いに有用だと言えるでしょう。
同時に、これはITベンダーの役割をも変化させるものになりえます。
従来の開発を受託するという役割から、「業務プロセスの改善」やそのための「ITツールの選定」等に関するコンサルティングやエンドユーザが開発を行うための開発支援(内製化支援)といった「ユーザのDXをサポートする」という役割に変わっていくと考えられます。
「改善」文化を育む
ノーコード・ローコードがもたらすのは効率的なITの導入だけではなく、組織文化に対する変化も期待できます。誰でも開発者となり、現場主体の開発や運用は、従来の情報システム部門を中心としたトップダウンではなく、現場主体のボトムアップで作り上げるITへの転換となるでしょう。
システムの利用者は、自分たちが要求すれば、それがシステムに反映されることに気がつき、やがて「どうすればより効率的なシステムになるだろうか」と考えるようになるでしょう。
つまり、現場の中に改善の意識が育まれるのです。
ノーコード・ローコードは単なるアプリケーションの開発手法ではなく、このような改善文化の育成にもつながると考えられます。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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